癪にさわるジャンクマザー!!

ABIT AB-PN5
      ab-pn5

 98年の晩秋の頃、秋葉のバーゲンインで見付けたATのジャンクマザーです。段ボール箱の中に無造作に放り込んでありました。430HXチップセットが載っています。良く見てみるとBIOS-ROMがありません。これでは動くはずもなく、まさしくジャンク品です。値段は、1,200円。ボードには、AB-PN5と型番が大きく印刷してあります。じっと眺めていて思いつきました。自宅には、BIOS-ROM用のフラッシュメモリの予備があります。マザーボードの型番は分かっていますから、BIOSプログラムはインターネットから入手できる可能性があります。なんだか色々と楽しめそうな予感がし、思わず買ってしまいました。

 BIOSプログラムはインターネットにて入手できました。手持ちのフラッシュメモリに別のマザーボードを使って書き込みました。型名AB-PN5から予想したとおりABITのマザーボードでしたが、型が古く、もうBIOSはアップロードされていないのではと心配でしたが、OLDマザーとしてWebサイトに残っていました。ジャンパーピンの説明は見つけることが出来ませんでした。

 BIOSを書き込んだフラッシュメモリを差し込んで見ると問題なく起動しましたが、どうも状況が変です。まず、CMOSチェックサムエラーとCMOSバッテリフェールのエラーがでます。最近のマザーボードに取り付けてあるCMOSバッテリーは通常5年は持つはずなのにエラーとなります。どうやらバッテリー上がりのようです。

ab-pn5  430HXのマザーはどこのマザーボードメーカーも大体においてCMOSバッテリーを外付けにするのではなく、RTC(リアルタイムクロック)とCMOSとバッテリーが一体になったモジュールを使用しており、バッテリー交換は簡単には出来ません。このボードもODINのOEC12C887Aというクロックモジュールがついています。マザーボードの裏側を良く見ると、このモジュールを取り外そうとした跡がありました。ハンダごてをICピンにあてた跡がはっきり残っています。どうやらこのボードは以前の使用者が壊したのかも知れません。モジュールをボードから外すのは簡単ではありませんので、モジュールを分解してみることにしました。

 プラスチックの部類の樹脂で固めてあるモジュールの表面にハンダごてをあてて、少しずつ樹脂をはがしていきました。すると予想どおり中からSONYの釦電池(CR1220)が出てきました。これを新品に取り替えましたが、なぜか完全に回復してくれません。モジュールを分解するときにどこかに影響を与えたのかも知れません。BIOS設定が問題なく終わりマシンが立ち上がりDOSを起動し、ALT+CTRL+DELで終了するとうまく再起動する場合やしない場合があります。またCMOSエラーの方も出たり出なかったりします。電池の取り付けが十分でないのかも知れません。

 次におかしな現象としては、2次キャッシュが壊れているような感じです。それらしきジャンパーピンを操作して見るとBIOSが2次キャシュを検出し、キャッシュを有効にするとDOS/Vの起動時にVGAモードに切り替わるとマシンがハングします。Linuxのインストール用FDでブートした時もそうです。2次キャシュが未検出であったり、検出してもBIOS設定で無効にすれば問題なく動きます。ところが、このボードにはキャシュメモリ増設用のCOASTモジュール取り付けスロットがあり、ここに別のマザーボードのCOASTのキャッシュメモリを付けるとBIOSが検出しない時のピン設定であるにもかかわらずボードの256K+COASTの256Kの合計512Kが検出されます。そしてこの時はキャッシュを有効にしても正常に動作します。なんとも奇妙な現象です。どうもCOASTの256Kのメモリだけがうまく動いているのかも知れません。

 次に、CPUの電圧設定ピンがあり、3.2V、3.4V、3.7V(テスターで測定した)の3とおりの設定が可能に成っていますが、なぜか3.7Vに設定するとマシンが起動しません。CPUは4.8Vでの動作を確認してあるPentium133MHzを使いましたのでCPUの問題ではありません。これもおかしな現象の一つです。

 とにかく動くには動くもののあまりにも不安定です。他に手持ちのマザーボードもあり、このジャンクボードをどうしても動かさねばならないという訳ではありません。このボードをいじくるのはここまでにしました。およそ一月の間、色々と楽しめた訳ですが、それにしても癪にさわるボードです。なんとか一人前に回復させる方法がないものかと思案しましたが、結局、廃材として処分してしまいました。


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