座頭谷〜記念植樹碑〜縦走路〜大谷乗越〜縦走路〜赤子谷右股〜赤子谷左股〜縦走路〜宝塚 2007.8.26

     先日遡行した三ツ下谷と同様に小滝やゴルジュが楽しめるという赤子谷左股を歩いて見ることにした。しかし赤子谷左股だけの遡行では時間が余ってしまう。そこで座頭谷を組み合わせて見た。

     阪急宝塚駅から蓬莱峡経由の有馬方面行きバスに乗り込み、「しるべ岩」バス停で降りる。バス停から少し西に進むと、道路左手に「しるべ岩」の案内板があった。しるべ岩は、太閤秀吉が作らせた有馬への道を記した岩だ。今日は見学はしないでやり過ごす。

     西の方、大多田川と座頭谷川の合流地点に、風変わりな大きな堰堤が見える。一見すると「万里の長城」かと思われるような形状をした堰堤だ。堰堤の上が道となっており、座頭谷へはあの堰堤の上の道を行く。

     堰堤取り付きで、これからの歩きに備えて準備体操を軽く行う。持参した荷物の整理をする。この堰堤、後で知ったのだが、新しい工法の暗渠式堰堤というものらしい。土砂を堰き止めるのではなく橋脚部分の暗渠から土砂を流し、流量を制御するものらしい。上流から流れてくる土砂石流量と暗渠の通過流量のバランスが設計の要だろう。座頭谷は、堰堤構築の歴史を眺められるというが、その最新の堰堤がこの堰堤ということなのだろう。

    今日はここ「しるべ岩」バス停がスタート。
    バス停から西に見える「万里の長城」のような堰堤を越えて行く。


    堰堤の上の道を進む。
    遠くに見えるのは大平山。
    今から向かう座頭谷の方向を望む

     堰堤の上の道を進み、座頭谷の右岸へと進む。川には小さな堰堤が幾つも設けられており川床を真っ直ぐに歩いて行くのは不可能だ。そのため右岸の林の中の道でこれらの堰堤を巻いて進む。道は、時折林の中から川の中へと分岐するが、道なりに真っ直ぐに進むのが正解のようだ。途中、大きく道が2分岐する所、「座頭谷」への道案内札を見落とさないことだ。ここの分岐を左に進むと大谷から大谷乗越に繋がるという。また機会があれば歩いて見たい。

     分岐を右に取り、林の中を進むと道は川べりに出てくる。前方に新旧取り混ぜた4段の堰堤群が見える。最上段の堰堤は今時のコンクリート剥き出しの味気ない堰堤だ。巻き道は、これら4段の堰堤を一気に巻いて上がる。

     巻き道から最上段の堰堤上部左に降りてくる。ここから河原に降り立つ。辺り一面岩だらけの様相に圧倒される。この岩だらけの河原を奥へと進んで行く。右岸よりには、わずかながらも水が流れており、手を浸けて見ると気持ち良い。

    谷の右岸沿いの林の中の道を進んで行く。
    2分岐、ここは右に座頭谷へと進む。左に行くと大谷。
    分岐にあった案内板。


    新旧取り混ぜた4段の堰堤。左の巻き道で一気に越える。
    最上段の堰堤の上に出る。
    堰堤の上から見る下流方向。


    堰堤の上は土砂で埋め尽くされて岩だらけ。
    谷の奥へと進んで行く。

     河原を奥へと進んで行くと正面に石積みの堰堤が見えてくる。どうやって越えるのかと案じるまでも無く、左手林の手前に「棚越」への案内札が吊り下げてあった。林の中へと巻き道を進んで行く。

     暫く林の中を進むが、道は、奇岩・奇景の傍を掠めて通る。支谷を一度横断し更に進んで行くと、またもや、大きな堰堤を乗り越えて河原に降り立つ。正に絶景。周囲270度、その奇景に暫し見とれてしまう。

    正面に小さな堰堤。左手に巻き道の入り口が見える。
    ここには、こんな案内板があった。
    巻き道は、奇岩の傍を掠めて通る。


    巻き道からまたまた岩だらけの河原に出てくる。周囲は圧倒されるような奇岩。ここを奥へと進んで行く。

     岩だらけの河原を真っ直ぐに奥へと進んで行く。賽の河原とはこんな所だろうかなどと考えながら、足下に注意しながら進んで行く。河原の真中に立つ一本の枯れ木に巻かれた道案内のテープが心強い。

     そのまま進んで行くと、正面左、林の手前の立ち木に巻かれたテープが、この先林の中へ進めと案内する。案内に従い林の中へと進んで行く。この先また次の河原に出るものと思っていたが、道はどんどんと山の中へと続き、その後、右手斜面を登り出した。どうやら座頭谷の脱出道に入ったかと確信するとともにあっけなく終わった座頭谷歩きがちょっと心残りであった。

     急坂を登り切ると広い道に飛び出す。道を左に進むとそこはハニー農園の中であった。農園の中の休憩所で一休みする。農園はまだ営業前なのかひっそりとしている。流れる汗を拭い、少し落ち着いた後、表の車道へと向かう。入り口の門は閉まっており横の木の柵を乗り越えて外に出る。車道向かいを右に少し北に下り、鉄柱2本が立つ間を山の中へと進む。

    河原の真中にあった道しるべ。ここを真っ直ぐに進んで行く。
    正面林の中へと進む。
    林の中の道は暫く進むと急坂となる。


    こんな所に出てくる。
    出た所の広い道を左に進むと、
    ハニー農園の中に出てくる。


    農園の中の休憩所で一休み。まだ営業時間前でひっそりとしていた。
    農園入り口の門が閉まっていたので横の木の柵を乗り越えて車道に出る。
    農園入り口車道向かいの右手の鉄柱2本が立つ所が次に進む道。

     山の中に入ると西に向かうしっかりとした道が現れる。安心して歩いて行くが、100m程進むと踏み跡が薄くなり、倒木が辺りに目立つようになる。西に真っ直ぐ進むものと思い倒木や立ち木を避けて進むのだが明確な道が見当たらない。これはおかしいと思い、少し戻り周囲を見渡すと南に延びる道らしき踏み跡がある。そこで、南に進んで見ると踏み跡明瞭となり、これで間違いなかろうと進んで行くと、その先で車道に出てしまった。北側を振り返るとハニー農園入り口が100m程先に見える。なんのことは無い農園の前から少しも進めていない。

     どうにも道が判らない。こういう時はやはり元に戻って見ることだ。来た道を戻る。最初道が判らなくなった辺りまで戻って来ると向こうに北に延びる明確な道が見える。不思議に思いもう少し戻って見ると踏み跡不明瞭となった辺り足下付近に赤テープがあり北へ進むように示していた。

     北に進むのはどうもおかしいような気もするが取り合えず道を進んで見ることにした。半信半疑、北に少し歩くと三叉路に出た。一本の道が右から左へ山の中へと延びている。頭の中で位置関係を整理してみる。この道が地図にあるカーブNO2のあたりからの道のようだ。今歩いて来た道は枝道のようだ。

     ここで思わぬ時間を潰してしまった。時間を取り戻すべく道を急ぐが、この道なかなかに急登な道で歩が進まない。また、道の両側の立ち木に張り巡らされた蜘蛛の巣に何度も顔をひっかけ、その度に奇声を上げてしまう。座頭谷の林の中を歩いていた時も蜘蛛の巣に往生した。今日はまだ誰もこの道を通っていないようだ。

     今歩いている道は間違いなかったようで、急登な道を登り切ると、杉植林の中へと道は進み、無事、「御成婚記念植樹碑」のある所に辿り着いた。地図を見る限りここからの登りはそれ程でもない。道なりに進んで行くとほどなくして東六甲縦走路出合いに着いた。道迷いの状況

    農園入り口から北に50m程のところだ。
    鉄柱の間を進んで行くとしっかりとした道があった。
    この先、倒木が道を塞ぎ進路がわからなくなる。
    進路取りを誤り農園の南側の車道の所に出てしまった。
    元の道を戻り、正しい道を発見、先に進むことが出来た。


    杉植林の間を進む。
    無事に「御成婚記念植樹碑」を見ることが出来る。
    植樹碑から道なりに進んで行くと東六甲縦走路との出合いに出る。

     次の目標地点は赤子谷右股下山口、岩原山登山口のあたりだ。昼食は赤子谷右股左股分岐の河原で取ろうと思う。後1時間〜1時間半、この先特に問題が無ければ着けるはずだ。

     縦走路を東にどんどん進んで行く。大平山の保守道路で持参したパンのひとかけらを食べる。大谷乗越を過ぎて順調に岩原山登山口に着く。時刻は11時30分。右股下山の取り付きが何処にあるのか予備知識が無い。岩原山頂上への道とは別に北に延びる道があるが山腹の道のようだ。先で谷に下るのかも知れないが確信は無い。ここから直接谷に下る道があるかも知れないと思い周囲を見回して見る。すると、近畿自然歩道を示す立派な道標の向こうの立ち木に、大きく赤ペンキが塗られているのを発見。もしかして、と思い傍に寄って見ると下に下る道が見える。これだ、これだ、これこそ右股への下り道だ、と確信する。

     ここから道を下る。暫くして踏み跡不明瞭となるが、周囲には苔むした岩が現れ、谷の源流部の様相を示して来るが水はまだ無い。随所にテープがあるものの迷いそうな所は無くどんどんと下って行く。結構下ったかなと思う頃、右手から道標のある縦走路からの下山道と思われる道が合流する。

     合流点を真っ直ぐに谷に下りて行く。水が染み出して来ている湧水個所を過ぎると、暫くして沢沿いの道へと変化した。水も流れ谷らしい雰囲気になってくる。右に左に幾度も沢を渡り、小さな堰堤をいくつも巻いて下る。動画:右股の沢

     堰堤を越える巻き道が右岸尾根の上へと続き、いつしか尾根歩きとなる。尾根道の右手眼下にもう一つの谷、左股の谷だろう、が見え出すと道は下りとなりケルンのある所に降り立った。前方には河原が見える。どうやら右股左股分岐に辿りついたようだ。ここの河原の木陰で昼食休憩を取る。これからの左股遡行に備え十分な休憩を取ることにする。

    縦走路を東に進む。
    小笠峠への分岐をやり過ごす。
    分岐に付けられた道案内。


    大平山無線中継所の保守道路に着く。
    保守道路を東に進む。
    大谷乗越に着く。


    岩原山への登山口のある所に着く。
    このあたりに赤子谷右股への下り道があるはず。取り付きを探す。
    立派な道案内板の東向こうに赤ペンキが塗られた木が見える。


    傍に寄って見てみると、倒木の向こうに下り道が見える。ここを下って行く。
    苔むした岩が現れ、谷の源流部の様相を見せてくる。この道に間違いない。
    右手から、縦走路の赤子谷への道案内がある所からの下り道が合流してくる。真っ直ぐに谷を下る。


    谷の源流部の水が染み出して来ている所。
    いつしか沢沿いの道となる。この後、堰堤を右に左に乗り越えて下って行く。
    堰堤の巻き道が尾根の道となり、尾根道を進むと右股と左股の分岐に降りて来る。


    分岐点のすぐ先はキャンプ適地な河原だ。
    ここで昼食休憩とする。
    先ほどの分岐点(ケルンがある所)に戻り、左の方向に進む。

     30分程の休憩の後、先ほど降り立ったケルンの所から左に、左股へと進む。歩き出してすぐに最初の堰堤が出迎える。こことその次の2つの堰堤を乗り越えて行くとすぐに開けた所に出る。その向こうには水量豊富に流れ落ちる赤子滝が待ち構えていた。あまりにも早いお出ましにちょっとびっくり。もう少し苦労して辿り着くのかと思っていたのだが。動画:赤子滝

     赤子滝は、右の急な斜面を乗り越えて巻いて行く。滝の上部に巻き上がり、沢の中を少し行くと、これまた広い場所に出た。正面に小さな滝が流れ落ち、滝の上部に暗い洞穴のような口が見える。あれが噂のゴルジュの入り口だ。動画:ゴルジュ入り口ふと右手を見ると滝があり、こちらも水が流れ落ちている。誰が付けたか半割りの竹で作った樋が設えてあった。余りの暑さに我慢できず、樋の傍に口を近づけ水を飲む。動画:右側の滝

     周りの雰囲気を充分に楽しんだ後、正面の滝、ゴルジュへと進んで行く。それにしても、この谷は、核心部がすぐに現れる谷だ。先日歩いた三ツ下谷などは、小さな滝から大きな滝へと順番に出現し、やっとの思いで10mの滝を越えると、さらにその先、谷歩きの最後でやっとゴルジュに出会えるというものであった。

     入り口にある滝の上部から見通して見ると結構長いゴルジュだ。中に幾つもの小滝が見える。暗い洞穴に飲まれるかの如く、滝の左手を登りゴルジュの中へと進んで行く。ここのゴルジュは大きい。三ツ下谷のそれよりも倍ぐらいのスケールだろうか?

     ゆっくりと楽しみながらゴルジュの中を進む。心配した藪蚊に出会う事も無く、水量もほどほどでトレッキングシューズでも楽に越えて行ける。流木が立ち塞がる所も案ずる事無く簡単に抜けられる。

     ゴルジュを出ると広い谷間の空間に出る。一見すると行き止まりかと思えるが、右にクランクして進む。左手前方に滝が現れ行く手を阻む。この滝は向かって右を巻いて上がる。動画:クランクの先の滝

     この後、幾つかの小滝を越え、二股に着く。正面に黒いナメの滝、左手向こうに小さな滝が見える。ここは、テープ標識に従い左に進むのが正解のようだ。

     左に進路を取り、進んで行くとまたまた次の滝が立ち塞がる。段状の滝だ。高さは5mほどか。正面左が巻き道のようだが段状だけに直登を試みる。滝の中ほどまでは容易に登れる。その先を登ろうと軸足を乗せる岩を探る。候補となる岩は少し斜になっており水も流れている。軸足を載せるには少し危険だ。無理をせず左にかわし巻き道を登る。動画:段状の滝

     この後、大きな滝が現れることは無く、これという小さな滝も見当たらず、なんとなく物足りなさを感じながら進んで行くと、水も枯れ、とうとう谷の沢歩きも終わってしまった。

     急な登り道で一気に突き上げて行くと、岩倉山傍の送電鉄塔の真下に出る。東縦走路に出て少し東に進み見晴らしの良い場所に出る。汗でずぶ濡れとなったシャツを乾かそうと日の当たる場所に出て見たら、余りの暑さで頭がくらくらしてきた。熱中症にでもなれば大変だ。すぐに木陰に戻る。

     氷を詰めた魔法瓶にペットボトルの残りの水を加え冷水を作る。一息入れた後、宝塚に向けて縦走路を西に下る。えんぺい寺休憩所にて安否を気遣う家族に無事のメールを送る。

     宝塚温泉にて汗を流そうかとも思ったが、着替えも無く諦めてそのまま駅に向かい帰宅することにした。

    木にぶら下げられた左股入り口案内札。
    最初の堰堤が見えてくる。左に渡渉し堰堤の左を乗り越える。
    すぐに現れる次の堰堤。ここも正面左を乗り越える。


    堰堤を越えると、すぐに赤子滝に着く。滝の案内札の右手の斜面が巻き道のようだ。動画:赤子滝
    赤子滝に近づいて見る。水量豊富な滝だ。
    赤子滝を過ぎて暫くで広い場所に出る。正面の小さな滝の上部がゴルジュの入り口。動画:ゴルジュ入り口


    ゴルジュ手前右手にある滝。樋がつけてあり水飲み場となっている。
    余りにも暑いので我慢出来ずに水を飲む。動画:右側の滝
    滝の上部からゴルジュを見通す。
    ゴルジュの中へと入って行く。動画:ゴルジュの中


    後方を振り返って見るとこんな感じだ。
    ゴルジュはまだ続く。
    ゴルジュの中、こんな小さな滝を幾つも乗り越えて行く。


    二股に出る。ここは左に進む。
    テープもあるので迷うことも無い。動画:二股
    段状の滝が行く手を阻む。中断までは直登したが、足下が滑りそうなので最後は左の巻き道で乗り越える。動画:段状の滝


    滝も現れず、水も枯れて楽しい谷歩きもそろそろ終わり。
    谷の源流部から急な坂道をひたすら登って行く。
    この石積みを越えると後もう少し。


    この坂道の終わりが見えて来た。
    送電鉄塔に下に出てくる。
    東六甲縦走路に出て、少し西に行き左に入ると見晴らしの良い場所に出る。


    甲山方向の遠景を望む。
    木陰から日の当たる場所に出ると暑さで頭がくらくらする。すぐに木陰に戻る。
    宝来橋西詰に着く。宝塚駅は、後一息だ。
    今日も無事に最終地点、阪急宝塚駅に着く。

     座頭谷、赤子谷右股、左股、雰囲気の異なる3つの谷を一度に味わえた楽しい山歩きであった。惜しむらくはハニー農園付近での道迷いだ。もう少し綿密な事前調査が必要だったかと反省。座頭谷や赤子谷左股は秘境とも呼べるような所、六甲の奥深さ、多様さを改めて感じさせられた一日であった。


     各地点の到着時刻、所要時間は次のとおり。

    しるべ岩 8時17分出発
     〜( 2分)〜万里の長城のような堰堤 8時19分着、8時28分発(9分準備)
     〜(25分)〜4段の最上段の堰堤の上 8時53分通過
     〜(24分)〜座頭谷脱出口 9時17分通過
     〜(18分)〜ハニー農園 9時35分着、9時40分発(5分休)
     〜(58分)〜御成婚記念植樹碑 10時38分通過
     〜(10分)〜東縦走路出合い 10時47分通過
     〜(29分)〜大谷乗越 11時16分通過
     〜(14分)〜赤子谷右股下山口(岩原山登山口) 11時30分通過
     〜(53分)〜赤子谷右股左股分岐 12時23分着、12時54分発(31分休)
     〜(11分)〜赤子滝 13時5分通過
     〜(19分)〜ゴルジュ通過 13時24分通過
     〜(48分)〜送電鉄塔下 14時12分通過
     〜(62分)〜阪急宝塚駅 15時14分着


     万歩計による歩数:26,800歩
     歩いた距離:約12.3km


    今日歩いたコース。