レンタルショップ倒産の波紋 2003.5.27

    Movie  町内に、かれこれ5,6年前から、小さなビデオレンタルショップが1軒、ほそぼそと営業している。その前を車で通り過ぎた時、妻が言った。
     「あの店、つぶれたのかしら?いつもの看板が出ていない」
     「看板って?」と私。
     「ほら、新作がどうとかっていう、旗が立ったりしているでしょう。それが無いし、なんだか電気もついていなかったようだわ」
     「ふーん、つぶれたかもしれないね。」
     「可哀想だけど、いい気味だわ。」
    というような会話を交わした。

     車で数分の距離に大きなビデオレンタルショップTSUTAYAが2軒、ゲオが1軒ある。この影響で、町内のわずか70〜80坪の大きさの住宅地に建てられた、小さなレンタルショップなんて、遅かれ早かれつぶれる運命にあったのは間違い無い所。

     夕刻に犬の散歩で、店の前に立った時、今月末を持って閉店との案内書きが入り口に貼ってあるのを見た。「月末までに返却頂かなかった商品は債権回収業者扱いになります」と書いてあった。経営者が健全な内に閉店したのではなく、資金繰りに行き詰まっての倒産による閉店だと思われる。

     そのショップには、ある出来事があってから、一歩も足を踏み入れていない。それは、息子が中学生頃の時のことだったから3年以上も前の事になる。小さなショップであるが、同じ地域に生活する者として、贔屓にしてあげようと、毎土曜日毎に、ショップに通った。買い物の帰りには必ずといって良いほど立ち寄った。妻も積極的に新譜のCDをレンタルした。

     ショップが出来てから、一年以上も、こうしてレンタル店とお付き合いしてきた訳だが、ある日の事、ショップから、電話が掛かってきた。2〜3週間程前に返却したはずのCDが返却されていないという。妻の話では、最初は、低姿勢の電話だったが、こちらが、返却したはずと告げ、向こうが、いやしていないと、押し問答を繰り返している内に、泥棒呼ばわりするような口調になったという。私が、夜に電話した時にはアルバイトしか居なく、翌日に電話してくれという。翌日、経営者に電話してその時はそれで済んだが、暫くしてまた、同じ様な電話が掛かってきた。今度は、お宅は前科があるからと言わんばかりの電話であった。それ以来、ショップへの立ち入りをやめてしまったという次第。

     元々、小さなショップで、貸出・返却の管理がきちんと出来ていそうで、出来ていないふしがあった。返却時のバーコード読み取りを省略したり、1台しかないレジスタが故障した時には、手書きで貸し出し記録を付けたりしていた。

     当方の貸し出し記録を見れば、きちんと返却しており、また、あしげく利用していることが判る筈。町内の大事なお得意さんが、返却が滞ったり盗んだりはしないだろうと普通は考えるはずと思うのだが、そんな基本となる顧客管理も出来ていなかったというのだろうか。返却から2〜3週間も経ってから電話してきたり、頭から泥棒扱いするとは、全くもって管理不行き届き、失礼千万である。

     地域に根を張り、地域の人と共生していこうとするなら、もう少し管理・言動に気を付けて欲しいものだ。単に金儲けだけを目的に店を経営していたというなら、つぶれて当然の報い。それこそ、妻が言う、いい気味である。

     もう3年も前から利用していない店だからつぶれようが、どうなろうが関係ない事と言えば、それはそれで良いが、そうとも言えない事情がある。考えても見て欲しい。こういう店は、ほとんどが会員制だ。町内の小さなショップといえども、開店時には、開店サービス目当てで、会員登録する人で行列が出来た程。町外からもたくさんの人がやって来て会員登録した。数百人、いや千人を越える会員登録がなされたと思われる。ショップの倒産に伴いこの会員情報は、一体どこへ行ってしまうのか。

     個人情報保護法案が出来るというが、このようなケースにおける情報保護は一体どうなるのだろうか。閉店案内の貼り紙に書いてあった「債権回収業者扱いになります」の言葉が不気味だ。倒産による閉店、会員情報は、債権回収業者の手に渡ると見て間違いなかろう。