カセットデッキの修理が面白い 2009.1.29

     昨年の秋口からレトロなオーディオ機器を集めだした。約30年前に一度所有し、10年程使用した後に廃棄して しまった機種が、ヤフーオークションに時折、出品されるのを見るにつけ、懐かしさがこみあげてきて、それらを 集めだしたわけだ。

     若かりし頃、最初に手にしたPIONEERのレシーバー・アンプ「SX-414」 を始めとして、TRIOのアンプ「KA-7300」、 SONYのFM/AMチューナー「ST-5150D」、 SONYのカセットデッキ「TC-K65」が、あっという間に集まった。

     昔持っていた機器の収集は、これで終わる訳ではなく、PIONNERのスピーカー「CS-810」、SANSUIのスピーカー「SP-10」、 Victorのポータブルカセット「KD-3」、Technicsのプレーヤ「SL-1501」等を、機会があれば入手したいと思っている。

     30年も前のレトロ品だけに、今時入手できるものは全てジャンク品だ。幸い、集めたものは全て修理ができて昔の姿に 蘇った。

     カセットデッキの「TC-K65」「KD-A5」を修理した時に、 使われているゴムベルトが未だに健在なのにびっくりした。 ミニコンポの修理をよく手がけるが、10年も経過したものはゴムベルトがヘタっているのが常識、それなのに 30年前の製品が、問題無く動作するということに驚きとともにある種感動さえ覚えた。

     そんな事から、当時のカセットデッキに感心を持つようになり、カセットデッキを集めるようになった。 ネットで色々と調べて見ると同じような感心を持つ人がたくさんいるようで、そういう人達のブログや ホームページを見ていると面白い。

     共感できる点も多々あり、修理のポイントや、機種によって定番の不具合があることを教えられる。数ある カセットデッキにも、その昔、名機と呼ばれたものがあり、それらは、今も根強い人気を保っており、 ジャンク品といえども、相当な高額で取引されているということも判った。

     その当時定価が、10万円以上した(ナカミチのデッキなどは20万円以上)高級機は、少々壊れていても一度は手に して見たいと思う人がたくさんいて、ジャンク価格を通り越えて数万円近い価格での取引となることもあるようだ。

     少々財のある人が、オークションで、これら名機のジャンク品を、なりふり構わず高値で集めまわることも しばしばあるらしい。人気機種ならば、一度手にしてその後、飽きたとしても、オークションに再出品すれば、 確実に買い手が着くという読みなんだろう。

     ジャンク品ならば、高くても1,000〜3,000円までが妥当な所だと思っている小生としては、こういう状況では、 なかなかに高級機を手に入れるのは難しい。

     いくら高級機だと言われても、所詮カセットデッキ、たとえ入手できたとしても、今後も末永く使って行くか どうかはなはだ疑問。一度手にして触って見れば、それで用済みとなるのが目に見えている。

     小生の場合は、入手の主たる目的が故障の修理を楽しむことにあるのだから、別に高級機でなくても良い。 故障の症状が複雑であればある程、修理は面白い。動作品は興味半減。とはいえ、修理したデッキの音が悪っかたり、 操作が平凡なものでは、折角の苦労が報われない。それなりに高機能で面白くユニークなデッキが望ましい。

     入手にあたり、ジャンクといえども見た目は大事だ。埃や汚れは、問題ないが、部品の欠品、破損はちと困る。 いくら名機と呼ばれた機種でも、「つまみがありません」と言われると敬遠してしまう。何しろ年代物だけに、 代替部品が入手できない。

     さて、「カセットデッキの修理が面白い」というタイトルを付けた訳だが、理由は簡単。カセットデッキは、 修理完治の確率が非常に高いということ。20年、30年も前の機械が、見事に蘇る様を見るにつけ、何ともいえぬ 快感を覚える。

     故障原因は、ほとんどがキャプスタン回転用のゴムベルトやアイドラーホィールなどのゴムパーツの劣化や カセットメカ部のグリスの固化だ。2年程前に修理を始めた頃は、ゴムベルトの調達に苦労したが、今は、 ベルトを自作するようになり、ゴムベルトに起因する故障はなんとかなる。グリス固化は、丁寧に拭き取って 再度グリスアップすればよい。

     電解コンデンサの経年劣化は交換すれば済む。トランジスタやICは滅多に壊れるものではない。TC-K65のように 抵抗が不良のような故障もあったが、抵抗交換で簡単に直った。ボリューム不良も分解すれば、なんとかなる。

     つまり、カセットデッキでは、不具合箇所をはっきりと特定できれば、コストを掛けずに、ほとんど直すことが 出来る。ところが、CDプレーヤーやMDデッキでは、そうはいかぬ。CDやMDでもゴムベルトが使われている 箇所もあり、ベルト交換のみで直る場合も多々あるが、ピックアップのレーザーダイオードの寿命が尽きている 場合には、なんとも手の施しようがない。

     ジャンクによっては、ピックアップのレンズ清掃や出力調整で直る場合があるが、こういう のは儲け物みたいなもので、MDなどは、再生は出来るようになっても録音が出来ないなんてことがある。 何しろ、MDのピックアップのレーザー出力は、録音時には、再生時の6倍のパワーを必要とする。

     なんとか、再生まで出来るように修理したMDデッキも、録音テストをしたとたんに、レーザーダイオードが 力尽きて昇天してしまうこともあった。レンズの清掃や出力調整は応急措置みたいなもので、 いずれそのままでは、レーザーダイオーの寿命が尽きてしまう。

     CDデッキやMDデッキの故障原因のほとんどが、このピックアップの不良であり、ピックアップを新品に 交換すれば直ることは判っているのだが、このピックアップ、入手が困難な上に、高価格なので始末に悪い。

     ONKYOのミニコンポFRシリーズのCD部は、SONYの「KSS213C」という普及品のピックアップであり、 ネットで簡単に入手できるが、値段は2,000円弱もする。これでも安い部類だ。MDのピックアップとなると、最低でも 数千円から1万円近い価格であり、ジャンク品を直して遊ぶ意味が無い。

     ここが悪いと判りながらも、コスト的にピックアップの交換ができず、泣く泣く修理を断念せざるをえないのが CDプレーヤーやMDデッキだ。これは、精神衛生上、非常に悪い。なんかもやもやが残り、 ゴミと化したデッキを恨めしく眺めるだけだ。カセットデッキの場合は、こんな事は無い。 非常に単純明快で、修理を完了した喜びを十分に味わうことが出来る。

     そんなわけで、カセットデッキのジャンク集めは、まだまだ終わりそうに無い。